ヘリコバクター・ ピロリ菌 とは?

お腹のケアと ピロリ菌

ピロリ菌 とは?

「ピロリ菌」をご存知でしょうか?もしかすると健康診断の際に、名前をお聞きになったことがあるかもしれません。ピロリ菌は、私たちの体に悪影響を及ぼすことがある細菌ですが、どのような菌で、私たちの体にどのような影響を与えるのでしょうか?この記事では、このピロリ菌の正体に迫ります。

1. ピロリ菌 とは何者か?

ピロリ菌 は、正式名称をHelicobacter pyloriといいます。Helico-は、らせん状のことを意味し、bacterは細菌の意味です。またpylroiは、胃の中の出口部分(幽門)を意味する言葉です。この名称からお分かりいただけるように、ピロリ菌は胃の粘膜に定着する、らせん状の細菌です。菌の体には鞭毛と呼ばれる尻尾が4~8本ついており、この鞭毛をスクリューのように回すことで、活発に動き回ることが可能です。

1983年に、オーストラリアの研究者、ウォーレン教授とマーシャル教授によって、胃炎の患者さんの胃内から発見されました。ちなみにこの二人は、ピロリ菌 を発見した功績から、2005年のノーベル医学生理学賞を受賞しています。世界各地に感染者がおり、世界の平均感染率は44.3%と報告されています。感染率は先進国が途上国より低く、成人が子どもよりも高いことも知られています。日本人は約3,000万人が感染していると言われていますが、1930年代生まれの67.4%が感染しているのに対し、1960年代生まれは49.1%、1990年代生まれは15.6%と、若い年代ほど感染率は低くなっています。近年感染者は減ってきていますが、依然多くの日本人の健康に悪影響を及ぼしていると言えます。

2. ピロリ菌 は、私たちの体に何をするのか?

ピロリ菌 の姿と感染部位(胃)

では、ピロリ菌は私たちの体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?実は、私たちがピロリ菌に感染しても、直後は特に症状がありません。ただ感染者の約3割に、胃・十二指腸を中心に複数の病気を起こすことが知られています。感染したピロリ菌に対し、私たちの体が防御反応として炎症を持続的に起こすと、萎縮性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍ができます。これは感染した場所で人体と菌の戦いが発生し、戦場となった胃・十二指腸が傷ついてしまう結果です。炎症がさらに続くと、胃がんや胃内のリンパ腫などの悪性腫瘍を発症するリスクが高まります。日本で行われた研究によると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍になった人のうち10年後に胃癌になった人は、ピロリ菌に感染していないグループでは0%でしたが、ピロリ菌に感染していたグループでは2.9%でした。
そのほか、貧血や血小板減少症などの血液の病気の原因となっていることがわかっています。
なお、一度感染したピロリ菌は、治療して除菌しない限り、自然にいなくなることは稀です。

3. ピロリ菌 に感染していたらどうすれば良いのか?

ピロリ菌への感染の有無は、健康診断の時などに検査をしてもらえることが多いです。
もし感染していることが判明したら、除菌の治療を始めます。ただし、除菌を開始するためには、一般的には胃カメラの検査を行い、ピロリ菌による胃炎が起きていること、そして胃がんではないことを確認する必要があります。除菌は、2種類の薬を使って行います。胃酸の分泌を抑制する薬とピロリ菌に効果のある2つの抗生物質を、1週間続けて内服します。この治療で7~8割が除菌されます。最初の治療で除菌できなかった場合は、抗生物質を1種類だけ変更し、2回目の治療を行います。2回の治療で、約9割は除菌されることがわかっています。また一度除菌されると、再感染することは極めて稀です。なお以前は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、また早期胃がんの内視鏡治療後に対してのみ保険適応となっていましたが、2013年以降は、慢性胃炎でも保険診療として除菌が可能となっています。これにより、多くの方が早期に適切な治療を受けることができるようになりました。

4. まとめ

知らない間に感染し、そして私たちの生死にも関わる病気の原因ともなり得るピロリ菌。ただ早期に発見し、しっかりと治療すれば恐れるものではありません。もしお困りのことがあれば、かかりつけの医師に相談してみましょう。

5.参考文献

  • Zamani M, et al. Systematic Review with meta-analysis: the worldwide prevalence of Helicobacter pylori infection. Alimentary Pharmacology and THerapeutics. 12 February 2018. https://doi.org/10.1111/apt.14561
  • Wang C. Changing trends in the prevalence of H. pylori infection in Japan (1908-2003): a systematic review and meta-regression analysis of 170,752 individuals. Scientific reports. 2017 11 14;7(1);15491. doi: 10.1038/s41598-017-15490-7.
  • Uemura N. Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer. NEJM 2001;345:784-9.
  • 日本ヘリコバクター学会

 

本記事は医師が監修しました。

株式会社AHC

ピロリ菌 の検査

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